大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)46号 判決

原告が昭和三四年特許庁に対し、(イ)号物件が本件実用新案の権利範囲に属する旨の権利範囲確認審判を請求したところ、特許庁は原告は確認審判請求する利害関係を有しないとして原告の審判請求を却下したこと、東京高等裁判所は右審決取消訴訟において原告に利害関係ありとして審決を取消したこと、そして右判決は最高裁判所の昭和三八年一〇月一八日上告棄却の判決言渡とともに確定したことについては、いずれも当事者間に争いがない。

成立について争いのない甲第三号証(東京高等裁判所昭和三七年七月一七日言渡昭和三六年(行ナ)第一五二号事件判決正本)、同第四号証(最高裁判所昭和三八年一〇月一八日言渡昭和三七年(オ)第一一六七号事件判決正本)によると、東京高等裁判所は右取消判決において、被告が乙第一号証のカタログを印刷配布したことを認め、これを印刷配布したことは、被告のそこに掲載されている紫外線殺菌消毒器を販売する意図を推測させるのに十分であり、被告がその意図を有していなかつたことをうかがわしめるに足る何らかの特別の事情があつたことについては、主張立証がなく、且つ右カタログ記載の紫外線殺菌器は(イ)号物件と同一のものと認められるから、原告は権利範囲確認審判を請求する法律上の必要をそなえているものとしたものであること、最高裁判所は右判決の上告判決において、被告が乙第一号証のカタログを印刷配布した事実がある以上被告の販売の意図を推測するのはむしろ当然であり、このような推測は反証によつて否定できるが、被告は原審でその推測を覆えすような事実について主張立証していないから、原審がした販売の意図の推測は違法ではないとしたものであることは明らかである。

ところで成立について争いのない甲第七号証(本件審決謄本)によれば、本件審決は、最高裁判所が右のように被告の販売意図の推測は反証により否定できるとした文言をとらえて、口頭審理により新たな証拠調をし、右推測を否定すべき反証があつたものとして、原告に確認審判を請求する利害関係なしとしたものであることは明らかである。しかしながら、本件審決は右両判決の趣旨を誤解してなされたものであることは明瞭である。なぜならば、事実審として最終審である東京高等裁判所は、前記審決取消判決において、被告の反証はないと認めたうえ、被告に販売意図ありと認定したものであり、法律審である最高裁判所は原審のした右認定過程に違法の点はないとしてこれを是認して上告を棄却したものであつて、右論点につき、審理不尽等を理由に、特許庁が更に審理判断する余地を認めたものではないのである。したがつて、これにより原告が確認審判を請求する利害関係を有するとの判断は確定したのであり、特許庁はこれに拘束され、異なる判断をなし得ないものである(行政事件訴訟法第三三条参照)。本件審決は、前記誤解に基づき、右の点に反し、改めて原告の利害関係を否定して原告の審判請求を却下したものであつて違法であり、取消を免れない。

以上のとおりであるから、被告の主張について判断するを要せずして本件審決を取消すこととし、訴訟費用は敗訴の当事者である被告に負担させることとした。

〔編註〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。

第二 請求の原因

一 本件審決及びそれに至るまでの手続の経過

(一) 原告は、実用新案登録第四五〇九九二号(考案の名称「紫外線殺菌器」、昭和二九年八月五日出願、昭和三一年九月二六日登録)の実用新案権(以下「本件実用新案」という。)者であつたが、昭和三四年一月二四日特許庁に対し、被告の製造販売する別紙(イ)号図面及び説明書に示す紫外線殺菌器(以下「(イ)号物件」という。)は本件実用新案の権利範囲に属する旨権利範囲確認の審判(昭和三四年審判第二九号)を請求したところ、特許庁は昭和三六年一〇月二日、被告は(イ)号物件を製造販売している事実は認められず、従つて原告は被告を相手として確認審判請求をする利害関係を有しないとして、原告の審判請求を却下する旨の審決をした。

(二) 原告は、昭和三六年一一月四日東京高等裁判所に右審決取消訴訟を提起し(同裁判所昭和三六年(行ナ)第一五二号)、同裁判所は昭和三七年七月一七日、被告が紫外線殺菌器のカタログ(当審乙第一号証)を印刷配付したことにより、被告に少くとも右殺菌器販売の意図があつたと推測できるとし、原告に確認審判を求める利害関係ありとして前記審決を取消した。

(三) 被告は昭和三七年八月一三日右判決に対して上告(最高裁判所昭和三七年(オ)第一一六七号)したが、最高裁判所は右上告を棄却したので、事件は再び特許庁に係属した。

(四) 特許庁は、昭和四六年九月二九日に、原告の確認審判の利害関係を認めたうえ、(イ)号物件は本件実用新案の権利範囲に属しない旨の審決をした。

(五) そこで原告は、昭和四六年一二月二一日東京高等裁判所に右審決取消訴訟を提起し(同裁判所昭和四六年(行ケ)第一四四号)、同裁判所は昭和五〇年七月一六日(イ)号物件は本件実用新案の権利範囲に属するとして右審決を取消す旨の判決をした。右判決には上告は行われなかつた。

(六) 右審決取消判決の結果、事件は再び特許庁に係属するに至つたが、特許庁は昭和五三年二月一〇日再び原告は権利範囲確認審判を求める利害関係を有しないとして、審判の請求を却下する旨の審決(以下この審決を「本件審決」という。)をし、本件審決は同年三月二九日原告に送達された。原告は、これに対し同年三月三一日取消の訴を起したが、これが本件訴訟である。

二 本件審決の要旨

原告が権利範囲確認審判を請求する利害関係を有するかどうかに関する東京高等裁判所及び最高裁判所の判決は、被告の殺菌器販売意図の推測について、新たな反証があればこれを否定する余地を認めたものであるが、新たな証拠調の結果反証があつたので、右両判決の存在にかかわらず、なお原告は利害関係を有するものとはいえない。

三 本件審決を取消すべき事由

原告が本件権利範囲確認審判を請求する利害関係を有することは、前記東京高等裁判所、最高裁判所の各判決により確定されているにかかわらず、本件審決は原告に利害関係なしとして審判請求を却下したものであるから、違法であつて取消されるべきものである。

第三 被告の答弁

一 請求の原因一、二を認め、三を争う。

二 被告は、(イ)号物件を製造したこともなく、販売したこともない。被告は、訴外有限会社西川製作所の依頼で、乙第一号証のカタログを印刷して同社に手渡したことはあるが、それは得意先へのサービスとしてしたにすぎず、また被告自身右カタログを他に配付したことはない。被告は、前記東京高等裁判所昭和三六年(行ナ)第一五二号審決取消請求事件の弁論において前記乙第一号証のカタログを被告自身配付したことを認めたが、右自白は事実に反し且つ錯誤に基づくものであるから、これを取消す。

三 乙第一号証のカタログ記載の紫外線消毒器は反射枠を有しないものであるから(イ)号物件と異なり、従つて被告は(イ)号物件を製造販売はもちろん(イ)号物件のカタログを印刷したこともないことになり、その故に原告は被告を相手方として(イ)号物件が本件実用新案の権利範囲に属することの確認を求める利害関係を有しないものである。

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